部誌に出そうとして、いくら何でも短すぎるだろうと取り下げたSSS(スーパー・ショート・ショート。苫津の造語)です。苫津はこういうの好きで書いてますが、一般受けは悪かろうと思ったり。
「あわい」は古語『間』であり、形容詞『淡い』でもある。意識の切れ目は意識の間に挟まるものであり、切れる直前直後の意識は淡く、現在進行形でしか物事を捉えることができず、レースごしの朝日は揺れ、窓際の床板は日焼けする。そんな世界の様子が好き。
なお初期タイトルは「二度寝」。
232字。続きを見るからどうぞ。
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日が昇る。新鮮な光がレースのカーテンを通り抜ける。そのまま真っ直ぐに瞼を貫いて、視神経を攻め立てる。
意識が浮上する。わずかな痛みと不快感に耐えきれず、瞼を閉じたまま瞬きをする。
身をよじる。布と布のあわいへと潜り込む。くらくてあたたかな世界のなかで、じっと膝を抱えて、あさく呼吸を繰り返す。冷えた鼻先が吐息であたたまる。
意識が沈下する。瞼が開いているのか閉じているのかの判別もつかず、暗闇に瞳孔が溶ける。
日が昇りきる。目覚まし時計のけたたましいベルが鼓膜を震わせた。
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