個人誌「息る」の2章「それでも、あなたの生は美しい」より。
1章「ルサンチマンをこえてゆけ」は……。恥ずかしい短文集(ポエムとは名乗りたくないのです)なので公開したくないですね……。
「息る」は全編 始業式の日に処理研のWordで原稿作って家で出力したシロモノです。
その中でもこれは原稿作りながら書いてたヤバいやつ。
まさか本文12Pの物理的に薄い本になるとは思ってなかった……! 短文・短編集なので本文12Pにあるまじき内容の薄さですし。なんなら文章は7Pくらいしかありませんし。
ちなみに「息る」、40部すべて捌けました! 至らぬところばかりとはいえ、やはり嬉しいですね……。
今回は表紙イラストを友人にお願いしました。
中の挿し絵的なものは自分で描いたのとフリー写真素材に文字を入れたのと。
表紙イラストはアレですが、挿し絵はあとでTwitterに上げますね。
453字。続きを見るからどうぞ。
抜けるような青空を、僕はじっと見ていた。
風に流された入道雲が、右手のビルから左手のビルまでたおやかに航海し、やがてここからは見えなくなる。
飛行機が空を切り裂いた。あとに残された飛行機雲はいずれ薄れて掻き消えることだろう。
横目でちらりと傍らを見れば、黒猫もまた空を見上げていた。背を撫でようと手を伸ばしたが、邪魔するなとでも言いたげにするりと抜けられる。
視界の端にちらつくビルの額縁が、絵画を巧妙に綾なす。満天の星空、嵐の前のピンク色の夕焼け、今にも泣き出しそうな厚い雲……。路地裏から刻々と変化するそれを眺めるのは、僕にとって(そしてきっと、この黒猫にとっても)最高の贅沢だ。
世界のすべては空なのだ――……。
胡乱な思考を放棄して、僕は身体を捻らせて起き上がった。身体が、特に腰が痛い。
――エアコンの室外機に上半身だけ寝転ぶの、やめようかなぁ……。
申し訳程度にストレッチをして、明るい大通りへ歩を進める。
めったに鳴かない黒猫が、ニャアと一声だけ鳴いた。
PR