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てい・ぽっと

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一日目



 コンクリートと水のコンサートは終わりそうにない。
 私はといえばお風呂入って落ち着きを取り戻したから、いつもの思考に戻れている。うん、さっきは動揺していた。深呼吸、だいじ。
「やまないね、雨」
「そうだな」
「いつまで続くのかな」
早くやんでもらわないと困るんだけど。
自称・"明るく愉快で子供好きな幽霊男"は、もう暗くなった窓の外を眺めている。対する私といえば、ドリアを食べながら(「一口くれよ」って言われたけど、幽霊が物を食べられるはずなかった)幽霊男の観察をしている。
黒鳶色のミディアムショートヘア、程よく日焼けした肌。白のTシャツにジーンズパンツ、上にカーキのミリタリーシャツを羽織っている。なぜだか服には焼け焦げたような痕があるけれど、生前は一体何をしてたんだろう。異性、というか他人に興味の無い私でも、顔が整っていることはわかる。真面目な顔してたら、けっこうモテるんじゃないかな。宝の持ち腐れもいいところだ。
「天気予報見ろよ」
「そうする」
完全に失念してた。自分よりアホな相手(言ってたから間違いない)に指摘されるのは、ちょっと複雑な気分だ。
『――さんの通夜は、明日にも執り行われるとのことです』
「なんか火葬されたらあの世行きそうな気がする」
ニュースで報じられたことに感化でもされたのだろうか、ぼそりと幽霊男が言った。
「そんな軽いノリでいいの、それ。幽霊的には重要なことじゃない?」
「いいんだよ、俺だって何が何だかわかっちゃねえし。ところでさ、日本の葬式ってどういう日程でやるんだ?」
「えっと、午後に亡くなったら次の日の午後にお通夜。その次の日に告別式と火葬……だったかな」
「そうか、あんがと。天気予報見ねえの?」
「え、あ、うん。見るよ」
いつの間にかニュースは終わって、天気予報のコーナーに切り替わっていた。この時間はテレビをつけないから、少し新鮮だ。
「わ、この先ずっと雨じゃん」
「マジかよ」
幽霊男が呆れたような声色で言った。
「ちょっとでも晴れたら出てってね」
「わーかってるよ」
「今日は早く寝るから。あんたはソファ使いなよ。ベッドに近づいたら殴るからね」
「わかったよ。殴れはしないだろうがベッドにゃ近づかねえ。しかし幽霊って寝れるモンなのかねぇ」
「――盲点だったわ。まあ目を瞑ってるだけでも疲れはマシになるでしょ。幽霊に疲れとかあるかは知らないけど」
「疲れ……まあ気疲れはある、かな。そうしとく」
部屋の明かりを消す。
布団の中で考えるのは、普段とは違うことだった。
「おやすみ」
いつもはない優しい声を遠くに聞きながら、私は微睡んだ。
そういえば、名前を聞くの忘れてた。

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