「俺、今日焼かれるから」
顔を合わせて第一声がこれだった。焼かれるってのが火葬のことなら、昨日お通夜だったんじゃないの……?
「そっか」
「反応薄くね? もっと『ええっ悲しい! 行かないで!』とかねえのかよ」
「裏声やめてよ気持ち悪い。……悪くは、なかったわ。話し相手がいることは」
言いたいことは沢山あったのに、その全てを言えなかった。幽霊の男は、それすら見越したように笑う。
「そーかい。あんがとよ」
「クソ親父とやらの顔、見てきたら? 今日火葬ってことは、もう少しで告別式でしょ」
「おう、そうする。じゃ、バイバイ」
「うん、バイバイ」
文字通り今生の別れは、酷く子供じみていた。
部屋の明かりを消す。ちゃんと笑えていただろうか……なんて、らしくないことを考えていた。
「おやすみ」
薄く色付いた世界に、もはや習慣となってしまった言葉が木霊する。
結局、名前は聞けなかったなぁ……。
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